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出場8チーム中7チームの演技が終わり、残るは日本の鉄棒の最後の1人だけとなっていた。
英国グラスゴーで行なわれている体操世界選手権。37年ぶりの団体金メダルを目指し、最終演技者の内村航平(コナミスポーツクラブ)が鉄棒の前にスッと立つ。会場全体が静まりかえる。
日本がトップになるために必要であろう得点はおおむね14点ほど。普通にやれば15点台の半ばは堅い内村だけに、よほどのことがない限り、金メダル間違いなしという状況だった。
バーを握る。車輪を開始する。すると、最初の手放し技であるコバチの体勢に入ろうとしたときだった。突然、会場に割れんばかりの歓声が響き渡った。地元英国の最終演技者の得点が出て、その時点で英国がトップに立ったのだ。
英国の大歓声が轟音のように響く中で演技をして失敗した、ロンドン五輪団体決勝のあん馬を思い出させる光景――。
内村は、コバチをなんとか成功させたものの、続く手放し技であるカッシーナでバーをつかみそこねた。前の演技者であった田中佑典に続く、まさかの落下だった。日本チームの空気が一気にどんよりと曇った。
「僕の中では何の狂いもなかったのだけど、車輪の(次の技へ行くための動きをする)ところで英国の大歓声がタイミング良く起きてしまって……。もしかしたら技術的にずれてしまったのかもしれない」
もう一度バーに飛びついた後はしっかりと技を実施したが、英国の上を行くには13.993点以上が必要となっていた。認定されるであろう技の数や、実施の正確さからすれば14点を下回ることはないだろうと思えたが、今大会は鉄棒の採点が非常に辛い傾向にあり、不穏なムードはぬぐえなかった。
「14点いくか? これはヤバイ……」
最後の最後に中国に抜かれ、0.1点差で敗れた昨年の二の舞だけは勘弁してほしい。
そう念じて見上げた電光掲示板。そこに示し出された得点は14.466だった。合計得点270.818点。英国もライバル中国も上回り、この瞬間、日本の37年ぶりの金メダルが決まった。
体操関係者はもとより、内村にとっては「団体の金メダルしか見ていない」とまで口にしてきた悲願中の悲願。しかも、予選ではゆかで頭部を打つアクシデントがあり、首を痛めてしまったが、それでも6種目出ての優勝だ。
だが、エースの顔に笑みが浮かんでいたのはわずかな時間だった。
複雑な表情が何度も浮かび上がってくるのが見えた。
「全6種目に出場して床から平行棒までかなりよかったが、最後の鉄棒で落下した。団体で勝ちを決める最後の演技者がしっかりやらなきゃいけない部分でできず、一番悔しく思っている」
確かに心から喜べる内容ではなかっただろう。同じようなミスをしていても勝てるほどリオ五輪は甘くないはずだ。
けれども、今回日本が勝ったのも事実である。ミスが出た種目のマイナスを他の種目、他の選手で補えるチーム総合力があったからこその金メダルだった。
引用元:Yahooニュース
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151029-00824438-number-spo